オリジンジャム2020|生産者がつくる夏祭り

本当ならば今日、2020年8月8日は「オリジンジャム2020」の開催日でした。新型コロナウィルス感染症の広がりを受けて開催は見送りに。次にいつ実現できるかが全く見えておらず、頭からフッと消えてなくなりそうになることもあります。でも今日を迎えたら、また当時の想いが湧き上がってきて背中を押してくれました。開催はできなかったけど、せめて誰かの心に少しでも届きますようにとブログに残すことにしました。

オリジンジャムが生まれるキッカケ

キャッチコピーは「生産者がつくる夏祭り」。“ORIGIN=原点・生産者 × JAM=混ざる”を掛け合わせた造語です。原点を生む僕たち農家のように第一次産業に関わる人たちが中心となり、今までにない新しい夏祭りを作りたい。これは主催者側も参加者側もきっと楽しくなるし、生産者にとって消費者の方たちとの新しい接点になるはず。そして僕たち生産者はなかなか各地へ足を運ぶことができないですが、一年に一度だけここに集まりませんかと。もしも日本中の面白い生産者が集まる夏祭りがあったらと想像したら凄くワクワクしたんです。このアイデアは僕の住む地域の失われた夏祭りを復活させたいという想いから始まります。

毎年お盆休みのころ、地域の集会所でお祭りが開催されていました。小さいスペースながら中央にやぐらが組まれ、赤く光る提灯がぶら下がり、大人はお酒・子供はジュースが配られる。太鼓の音が響き、昔から聞き馴染みのある音楽が鳴り始めると老若男女関係なく踊り始めます。正直、昔すぎてハッキリと覚えていないんですが、とにかくワクワクしていた事だけは強烈な印象として残っています。今になって分かるんですが、これは確実に祭りを作る側の大人が楽しんでいたからです。僕たち子供はその空気を楽しいと感じていたんです。

でもそのお祭りはいつしか失われていました。それがいつなのかも分かりません。高校卒業とともに地元を離れるころには夏祭りがないのが当たり前で、僕の中でその思い出を懐かしむこともなくなりました。両親にお祭りのことを聞いたら、準備など運営に関わる作業が大変で無くなったのではということでした。そう思えば祭りに限らずですが、役回りで作られる組織や行事はどんどん自然消滅し、残っていても不満が強く聞こえてきます。誰に聞いても真相は分かりませんが、おそらくこれが原因だと思います。やらなくてもいいならやりたくない、とうことでしょう。

夏祭りの熱量で新しい空気を作りたい

僕は兼業農家として畑仕事をする親の背中を見てきて、自分は絶対に農業に関わりたくないと思っていました。田舎と都会を比較して、こんな何もない場所で生活するのは嫌だと大学進学を口実に家を飛び出しました。それは「農業は儲からない。田舎には仕事がない。」と言われ続けてきたからです。そんな僕は今、自らの意思で農業を楽しんでいます。マジで田舎は最高だと思うし、この仕事ができている事実が幸せで誇りにすら感じます。つまり、身近な人からの影響は思考に大きく作用する。視点や捉え方を変えれば物事の本質が見えてくるということを身を以て体感しました。

同じ町内の農家仲間ナスケンに誘われて、地域の会合に参加したことがあります。テーマは「この地区をどうやって盛り上げていくか。新しい人を呼び込むか。」こんな感じだったと思います。参加者30人ほどで若い世代の参加者は僕とナスケンの二人だけ。まずは魅力を書き出していきましょう、みたいな流れになった時に皆さん言うんです。「ここには何もないからねー!」いやいや皆さん、盛り上がらない原因はこれです。子どもたちが大きくなると出ていく原因もこれです。本人が下を向いてたら誰も振り向いてくれません。良いところ沢山ありますから!なんなら、本当に何もなかったとしてもその何もない事を価値にできる時代ですから!作り手の考え方が場の空気を作ります。それは規模が大きくなるほど強くなります。

農業は土地に根を張って仕事をします。こうして縁あって地元に戻ってくることができて、こうして農家になれて、沢山の方に自分の活動を応援していただけている。この土地、この地域に凄く感謝をしています。だから農業を通してこの場所に恩返しをしたいと思っています。自分にできることは何か?未来を担う子どもたちに何を感じてもらいたいか?そこに失われた夏祭りが入ってきました。

夏祭りは地域の人たちが笑顔で繋がる大切な場所、そして秋の豊作を願う夏祭りと農業の親和性は高い。すぐにやりたいと思いました。でも「昔の祭りを復活させる」となると、声の大きな年配の方や地元の皆さんへの根回しがとても大変だと分かりました。それならば全く新しいものをゼロから作ってしまえばいいと決めたんです。

本気の挑戦は人を感化する

僕は就農してから年二回、きゅうりの収穫期に合わせて「しなやかフェス」というイベントを開催してきました。これは僕のテーマである「生産者と消費者の壁を壊す」を音楽×食×SNSで形にしたもので、回を重ねる毎に沢山の方に参加いただけるようになりました。当時はあまりピンと来ておらず今思えば凄いなと思いますが、初回開催から連続でTwitterトレンドの上位(最高2位)に入ったりと会場に参加いただけなかった方も巻き込むことができました。小さな田舎の小さなきゅうり農家のイベントとしては一つの成功事例で、一連の取り組みを昨年のマイナビ農業アワード2019で優秀賞をいただく事もできました。もちろん、このしなやかフェスの経験がオリジンジャムへと繋がります。

しなやかフェスを通して得たものは数え切れませんが、その中でも特に印象に残った宝物のメモがあります。それはしなやかフェスの運営が僕の力不足で赤字続きとなり、支援してくれる仲間からの応援に素直に喜べずに開催の継続をやめようと深く悩んでいた時の事。僕は毎回家族を全員招待するようにしているんですが、参加した翌日に長男が妻に渡したものです。

ままへ

昨日は楽しかったね

次は今年の何月?

かおるは、パパが

農かでよかったと

思いました

これを教えてもらった時、僕はビニールハウスで自分でも驚くほど号泣しました。(すみません、今もこれを書きながら泣いてます) あぁ、ちゃんと伝わってるんだなと。自分がしている事は決して無駄なことなんかじゃないなと思いました。

最後に

僕は決して「農業界を変えてやる」なんて思ってはいません。そんな柄じゃないし、別に今のままでもいいんじゃないかとすら思います。ただ自分を知ってくれた人が作物の裏側を覗くキッカケになってくれたら嬉しいし、僕がそうだったように「え?第一次産業って素晴らしすぎる!」なんて思ってくれたら最高です。まずは「知る」ということが大切で、もし隠れているのがもったいないと思う事があれば、それが見えるようにするために壁を壊していきます。

で、オリジンジャムは具体的に何をするつもりだったのかって?はい、何も決まっていません。むしろ何も決めていなかったというのが正しいかもしれません。僕の想いに共感してくれた人と一緒になって大きな大きな余白を埋めていく。この過程もまた、僕のスタイルでありオリジンジャムなのです。

今の状況から考えると実現できるのは2022年かな。それとも、もっと先でしょうか。その時はぜひ一緒にオリジンジャムを作ってください。それまでに僕も更に成長しておきますね。

2020年8月8日。今日は何も起こらない日。だけど、快晴なのがとても嬉しい日。