もし夫が農家になると言い出したら

しなやかファームの作業は夫婦で一緒にやる事も多いので、休憩時には二人でいろんな事を話します。くだらない事から真面目な話まで、気付いたら仕事するのを忘れてた…みたいな事も日常茶飯事。

そんな中、ふと奥さんが発した一言。

「周りのみんなは将来が不安だって言うけどさ。私はワクワクしてるよ。」

僕はきゅうり農家になって4年目。最初から農家になると決めていたわけではなく、それは突然のことでした。

もちろんあらゆる事を総合的に考えての決断でしたが、ずっと名古屋で暮らすつもりだった奥さんからしたら青天の霹靂。むしろ僕は田舎を否定して外に出た人間だと知っているし、実家も嫌いだと伝えていたので僕が「農家になる」と言い出した時は本気で意味が分からなかったと思います。

奥さんは名古屋で育って、自分の実家も近くにあり、三人の子供はまだまだ手がかかるけどママ友だちの繋がりもできて楽しく過ごしてる。そんな環境が一気に失われるわけです。

しかも農家?ちゃんと収入あるの?僕自身もやった事がないし、どちらかと言うとネガティブな情報が多く入ってくる。説得する方が明らかに難しい状況でした。幾度となく話し合いを続け、最後は僕を信じてくれました。そして今に至ります。

現在、彼女に対してとても恵まれた環境を作ってあげられているかと言われたらそんな事はありません。どちらかと言うと無理をさせていると思います。明るい未来は描いているけれど、それが実現するかはやってみないと分かりません。

この状況を考えると「この先が不安」と言われても仕方ありません。それを切り開いていくのが僕の役目だと思っているし、結果が全てだと分かってる。だから大きな選択をするときは自分だけの問題ではなく、家族全員分でそれを選ぶという心構えでいます。

そんな中で「私はワクワクしている」と言ってくれることが僕にとってどれだけの力になるか。嘘をつく人ではないのでそのままストレートに胸を打ったし、何なら嘘でも嬉しいと思ったくらいです。

振り返ると農業を始める前は奥さんと話す時間を全然作れていませんでした。相手はきっとこうやって思ってくれているだろう、という思い込みはきっと錯覚。こうして夫婦の共同作業ができたことで僕の想いや姿勢が説得力ある形で伝わるようになったのは結果としてとても嬉しい流れです。

何をやるかより、誰とやるか。一番近くにいる人が一番力になってくれている僕はもう、すでに成功者なのかもしれません。