きゅうり農家として就農して三年目、しなやかきゅうりもこの冬で第六期を迎えました。先日無事に苗の定植が終わり、樹も順調に出来上がってきていますが今作はひとつ心配な点があるんです。それが害虫の「ネコブセンチュウ」。
このブログは、きゅうり栽培の天敵ネコブセンチュウと初めて対峙したきゅうり農家がどうやって立ち向かっていくのかを現在進行形で記録したものです。
目次
知らないうちに根が侵されている…!
この写真は前作が終わった後に根っこを抜いたもの。ボコボコとコブのようなものができていると思いますが、これがネコブセンチュウの症状です。場所によっての多い少ないはありますが、ハウス全体に被害が広がっているのを確認しています。
ネコブセンチュウ害に気付いたのは今回が初めて。おそらく今までもあったんじゃないかな、とは思いますが全くのノーマークだったんです。今になって知りましたが、きゅうり栽培においてはかなりメジャーな害虫らしく、他のきゅうり農家さんは当然のように対策されていました。お恥ずかしい…
ネコブセンチュウに気づかなかった理由
どうして今まで気づかなかったというと、一つは作が終わって片付けるときに樹の最下部だけはそのまま土にすき込んでいたから。
本来は有機物として樹の全てを土にすき込みたいのですが粉砕する機械がなく、またトラクターではロータリーに絡まってしまうため断念。樹は基本的に全てハウス外に持ち出しているんですが、「せっかく頑張ってくれたきゅうり達を少しでも次に残しておきたい」との考えから、トラクターで対応できる範囲の部分だけそのままにしているんです。
もうひとつの理由。僕は就農時に小祝政明先生の提唱しているBLOF理論を学ばせてもらい、夏期を利用した「太陽熱養生処理」をしています。消毒剤などは使っていませんが、この時に土壌にいる害虫なども死滅させる事ができていると思っていたからです。
ただ今思えば僕は周年栽培ではなく年二作型。夏期は想定通り害虫が死滅したとしても冬期は太陽熱養生処理をしないため、植え替える際に害が出ていてもリセットすることができないないわけですね。
僕も年々経験値が上がってきた事もあり、すごく偶然だったのですが根の状態を見たくなって抜いてみたところネコブセンチュウを発見したという流れです。もしかしたらきゅうりからのSOSを受信したのかも…しれません。
胃が痛くなりながら対策へ動く
その後、いつもサポートいただいている普及員さんに聞いたところ「ネコブセンチュウに間違いない」ということで、対策に向けての段取りが始まりました。
ただ、正直この時点で全く時間がなかったのです。一般的にセンチュウ対策は土壌消毒といって、ハウス内に薬剤を一定期間充満させることで死滅させます。ただ僕の場合は定植日までの余裕がありませんでした。また、土壌消毒は僕の栽培方針からは外れてしまうんですよね。それは土壌中の有用な微生物も殺してしまうかもしれないからです。
とはいえ背に腹は代えられない。自分の未熟さを受け入れないと路頭に迷ってしまう。農家仲間にも相談しましたが、やはり土壌消毒が有効とのことでした。仮にこのネコブセンチュウの被害状況がひどい場合、大きなダメージがある状態で次作のスタートとなる。ヤバい… 胃が痛い…
ハウスへの蔓延は経営に大打撃!?
どうしようかとGoogle先生に聞きまくっていたところ、そもそもネコブセンチュウって何が悪いのかが分かってきました。一般的にいわれるネコブセンチュウの被害は「きゅうりの根に侵入し、根の細胞がコブ状になる。結果、生育が抑制されるなど様々な病害の発生原因となり収穫量が大幅減となる。」という感じ。
収穫量が大幅に減る=収入が大幅に減る、なのでやっぱり致命傷です。気絶しそう!でも待てよ。これだけネコブセンチュウの症状が発見できているのに、前作の収穫量が低かったわけじゃない。なんなら品質も含め良かったくらいです。
となると被害が大きくなったのは最後の最後で収穫量に影響しなかった、もしくは被害はあったけど収穫量に影響しなかった!?
ネコブセンチュウと友達になろう大作戦
そもそも時間がない、土壌消毒は栽培方針としては避けたい。というわけで僕の仮設は後者、ネコブセンチュウはたくさんいたけど、しなやかきゅうりと共存できていた。これでいくことにしました。
そんな時にこの記事と出会います。
参考 キュウリのネコブセンチュウ 劇的に回復サンビオティック農業資材メーカーさんの記事なので広告といえば広告なんですが…、その内容がまさに僕の考えと一致していたんですよね。見た瞬間「これだ!」と思いました。
すぐにこの記事を書かれたサンビオティックさんに連絡し、担当の方と繋いでいただき現状相談。(めっちゃええ人やった!) 丁寧に教えていただき疑問点が解決できたので、こちらの資材をベースに対策することに決めました。
結論、根が強ければ大丈夫。
以下は僕が定植までにやったことです。
①元肥の施肥時に殺線虫剤の「ネマトリンエース(粒剤)」の散布
殺虫剤を土に仕込むのも本当はやりたくない…ですが、僕の方針に対して限りなく影響が少なく、リスク回避の保険として使用。土壌内のセンチュウ密度を減らすのが目的。本来は先述の土壌消毒と併用するのが効果的だそう。
②元肥施肥時に微生物資材「菌力アップ」×「糖力アップ」の散布
お菓子を食べる娘に肘置きとして使われているこの2つの資材。定植後も灌水して使っていきますが、元肥時に使うことでも効果的ということで動噴散布しました。また、菌力アップは定植時のどぶ漬け→初期の株元灌水としても使いました。強い発根、根張り、活着促進が目的です。
③ライトグリーンマルチで被覆
土に被覆するマルチビニール。これまでは両面色違いの白黒マルチを使っていましたが今回初めてライトグリーンマルチを選択しました。雑草を抑制しつつ生育初期の地温上昇を優先させるのが狙いです。効果の違いはもちろん、今までとは見える景色が変わるので新鮮。全面緑になってなんだか森っぽい! pic.twitter.com/g1yJc3DlxV
— しなやん|百姓 (@shinayan_way) February 1, 2020
これまでは白黒マルチといって表面が白、裏面が黒で両面色の違うマルチを使っていました。これは夏期の地温抑制を狙っていましたが今回は初期生育に比重を置きたいため、逆に地温を高めに保つことができるこれを選択。ライトグリーンの色味で黒よりは弱いですが雑草抑制効果もあります。
勝負の分かれ目は強い根を出せるかどうか
なんとか6月末までの収穫まで耐えてくれたら、その後にまた太陽熱養生処理ができる。より効果を出すための工夫を加えることと、例年よりも長期間の実施を今から計画しています。
ネコブセンチュウは定植後の根が活発に動く時期には悪さはしないようで、収穫期に入り樹の上部に負担がかかってくると根の弱さにつけこんでくるようです。なのでポイントは「どれだけ強い根を出すことができるか」。特にこの序盤が勝負と見ています。
そのための丁寧な灌水、肥料選定、葉面散布など、今の自分ができる事をしっかりやっていきます。今思えば前作も初期の根張りがめちゃくちゃ良かったから大きな被害がなかったのかも。
土壌中にどれだけのセンチュウが密集しているのか、事前に診断していただいたのでまた最後に結果も報告しますね。僕が泣き崩れていなければ…
まとめ|多様性を認める環境で美味しいきゅうりを作る
理想は土壌生物との共存共栄。誰かを潔癖に排除しようとしても、それは無理じゃないかと思うんです。悪さをしないように先生がコントロールできれば、少しくらいヤンチャな生徒がいたほうがクラスが明るく楽しくなるみたいな…。違うかな(^^) でも感覚的にそんな想いでいます。
とはいえほんとドキドキする… でもワクワクでもある。僕はしなやかきゅうり達を信じる!それはそうと根っこが大事って、人間と一緒だな。